いかん、めまいがする……
きっと朝に食べたビーフンが腐っていたのだろう。食べてるときから腐ったビーフンの臭いがしてたからな。
ダメだ、立っていられない。
「大丈夫ですか?」
すみません、ちょっと支えていてもらえますか。
「はい。こう、ですか?」
そうです。ありがとう。でも、ああっ!やっぱり立っていられない。
すみません、美しいあなたにお願いがあるのですが。
「なんでしょうか」
乳首を吸わせてください。
「え?」
乳首を吸えばよくなるんです。我が家ではこうなるといつもそうしているのです。
「あの……」
いや、唐突にすみませんね。驚かれるのも無理はありません。
「わたし、乳首ないんです」
ない?乳首が?
「前の彼氏に吸われすぎてはがれてしまったんです」
はがれる?ピップエレキバンのように?
「あるいは、遠い夏の思い出のように」
美しいあなたに乳首がない……。まいった、これでは僕はここでうずくまるしかないのか。美女の乳首さえあれば……
「では一緒に探しましょう。美女の乳首を」
そうですか、そうしてくれるとありがたいです。
「では、わたしの肩を持ってください。行きましょう」
~30分後~
ダメだ!あなた以上の美女は見つからない!
僕にはもう、あなたしか見えない!!しかし、なんということか!あなたには乳首がない!!
「すみません」
いや、あなたのせいではない。
「わたし、男なんです」
お、お、男!?あなたのような美女が、男?
「いままで黙っていてごめんなさい。でも、決して騙すつもりじゃ……」
信じられない。あなたのような、国民的美少女コンテストでグランプリを獲れる器の美女が、男だなんて!
「数年前に出ましたよ、それ」
出たんですか!?
「水着審査でダメでした。わたしだけ海パンだったもので」
おお!ジーザス!!
いかん、めまいの次は片目が取れそうになってきた!ちょっと指で押し込んでくれ!
「はい、こうですか?」
痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!!
ふう、でもこれで、いや、ちょっと目の収まりが悪いな。よし、こうして、これで大丈夫だ。だけど、まだ立っていられない。ああ!!乳首を吸わなければ!!
「男根ならありますけど」
それは僕にもあるんだ!!男根ではダメだ!美女の乳首じゃないと!!
こうなったら、しかたがない。乳首のないあなたにお願いがあります!
「なんでしょうか」
結婚してください。
「わたし、乳首ないですけど、それでもいいですか?」
乳首なら、また買えばいい。僕のAmazonの「あなたにおすすめの商品」には大麻だってある。乳首だって買えるはずさ。しかし、あなたの愛は世界中のどこを探しても、ここにしかない!!
「ここ?」
そう、井の頭公園のボートの中に。
「わたしは泳いできましたよ」
見ていたよ。あなたのドルフィンキックを。美しかった。三沢のエルボーの如き迫力だった。
「昨日、彼に会いました」
もう死んだよ。
「死んだ?じゃあ、きっと天国で、あの、サザンのヒゲの方と一緒ですね」
サザンのヒゲは生きてるよ。
っていうかサザンのヒゲって誰だ!?なんだそのラルクのイケメンみたいな言い方は。原坊以外全員ヒゲ生やしてたぞ。
「それで、その……」
ああ、結婚だったね。
「やっぱりダメです。結婚だなんて……」
どうして!?
「純粋理性批判を読み終えなくちゃ……」
純粋理性批判を読破するひまがあるなら、僕と結婚を……ああっ!!
「どうしました?」
いかん、意識が遠のいてきた……
乳首さえ吸えれば……
乳首……
……
…
。
~fin~
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