空が、痛んでいる。
それは時折ルーズで曖昧な少女の微笑みのようだった。
それはよくある冗談の通り一遍な少年の性へのポーズのようだった。
感情的で、体のいいような世迷言のように彼女は髪を指でかき上げた。
その弾ける大胆なルールは、僕を邪な月明かりで照らすように情熱的だった。
ためらいがちな仕草で花を摘むときのように純情な気持ちを、妙な中傷で惑わすときに
僕は彼女と出会った。
「なにを見ているの?」
いや、別に、ただ空を見ていただけだよ。
「ハンバーグじゃなくて?」
ハンバーグじゃなくて。
「ふうん」
ねえ、
「どうしたの?」
誕生日、いつだったっけ。
「明日だよ」
昨日は今日って言ってなかった?
「だいたいそんな感じ」
そっか。
「ねえ」
なに?
「わたしのこと、好き?」
うん、好きだよ。
「どれくらい?」
ドアーズとレイ・チャールズのちょうど間。
「そっか。あ、ねえ」
なに?
「ギター弾けるの?」
少しは、ね。
「Amは?」
弾けるよ。
「ふうん」
どうしたの?
「いま、コロッケパンのことを考えてたから」
そっか。
「コロッケパンのことを考えてると、あなたがギター弾けたっけって気になるの」
そうなんだ。
「……夏、なんだね」
そうだね。
「夏になると思い出す」
なにを?
「田口ランディが芸人じゃないって」
そっか。
「もう帰ろうか」
そうだね。
「帰りにレッドブル買っていい?」
うん。
「翼がほしいの」
君の背中にはあるじゃないか。隠れているだけで。
「ある?」
君は天使だから。
~fin~
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