朝、目が覚めると朝になっていておれは頭痛と吐き気と喉の渇きでこれ以上は寝ていられなかった。
便所でゲロを吐いて水を飲んでから時計を見ると出勤の時間だった。おれはベッドで寝た。
三十分後、電話が鳴った。職場からだった。あと一時間で行くと告げて電話を切った。職場までは三十分あれば着く。おれはもう一眠りした。
タイムカードを切って仕事を始めた。頭痛は止まない。クソッとおれは舌打ちをした。それから非常階段に出て、煙草を吸った。昨日の酒が染み込んでいるような味がして、思わず吐き気をもよおした。それでも空を見上げて煙を吐いた。
「いい天気だな」
「ああ、申し分ない」
「いい身分だな」
「おかげさまで」
上司はおれの肩を叩くと中へ入っていった。
昼休み。食欲はまるでなかった。おれはさっきの非常階段で煙草を吸った。下の喫煙所ではなにやら笑い声が聞こえてくる。おれは缶コーヒーをすすった。空は青い。地球上で平等に得られる数少ないもののうちのひとつだ。もうひとつは死。あとは知らん。
仕事に戻ると上司に声をかけられた。欠員が出たらしくその穴埋めをしてほしいと言っていた。
「まあ、構いませんが――」
おれはそこで笑みを作った。
「――残業手当はいらないんで、今日の遅刻をチャラにしてください」
上司はため息をついた。
「残業の申請書を作るのも手間でしょう。遅刻届けもまだ出してません。つまりこれでイーブンです」
「わかった」
上司の背中を見送ると、おれは煙草を吸いに外へ出た。
いい天気だ。青い空、白い雲、新緑。素晴らしい。この世界は素晴らしい。
仕事さえなければ。