……さて、↑のタイトルをつけてみたはいいものの、圧倒的な羊頭狗肉の感が否めない恐ろしさと戦ってます。
テキストサイトで使われる(使える)テクニックをお話したいと思いますが、なにぶん僕自身も探り探りなものなので、どうなるかは書き終わらないとわかりません。つまりなんの責任も負えません。負うのは債務だけでいいです。
まず、基本というか、最初にお話したいのは、どんなテクニックよりも大事な、テンションです。
もう少し言うと抑揚です。
同じ話を書いても、テンションの違いで笑えるか、それとも「へえ」で終わるのか、かなり差がつきます。これは文章だけでなく、喋るときもそうですが、たとえば
今日、出勤途中で道にカバンが落ちてたんですよ、で、中に札束でも入ってないかなって思って開けてみたんです。持ってみるとそれなりに重かったし、札束が入ってたら速攻で会社に電話して今日付で辞めようと思って、パスポート取ってバリにでも行こうと。バリですよバリ。青い海を眺めながらオネエチャンの乳首をまさぐるところまで想像して開けたんです。
クツが入ってました。
は?お前、あのさあ、えっ?なに?札束は?俺の札束は?俺のバリは?俺の乳首は?乳首は俺のじゃねえよ。
こんな感じの書き方と、↓とでは
今日、出勤途中で道にカバンが落ちてたんですよ。中に札束でも入ってないかなあなんて思って開けてみると、なぜかクツが入ってました。
これだけの差があります。
なので面白い話を書こうと力むのではなく、乱暴にいえばテンションが高けりゃなんでも面白くなるんです。
もちろん、テクニックも必要ですが、まずはこのテンションを上げるということを頭に置いてもらえればと思います。
ここからは、↑の文章を元にテクニックの部分を解説していきます。
二通りの文章を見比べて、まずはっきりとわかるのは、文章量の違いです。
つまり、面白くするにはディティールの細かさが必要なわけです。ですが、ただあったことを事細かに書いたのではダメです。必要なのは信憑性を高めるディティールと、妄想を助長するディティールです。
カバンが落ちていて、中に札束が入っていないかなという、ありふれた妄想を、「持ってみるとそれなりに重かったし」と読者を一瞬でも信じさせ、「札束が入ってたら速攻で会社に電話して今日付で辞めようと思って、パスポート取ってバリにでも行こうと。バリですよバリ。青い海を眺めながらオネエチャンの乳首をまさぐるところまで想像して」と妄想を二周三周と広げていく、そういうイメージです。後者の妄想を助長させるディティールは、ぶっ飛んでいればぶっ飛んでいるほど面白くなります。
想像力をはたらかせるのではなく、ひとつの妄想からもうひとつの妄想へ繋げるときに、その距離が離れていれば離れているほど面白くなります。イメージだけでいうとキャッチボールをしているのにあさっての方向に思いっきりブン投げる感じです。それを何度も繰り返すうちに妄想が広がっていきます。
そしてオチとなる部分が「クツが入っていた」の部分です。妄想を広げ、テンションが上がったところで、数行開けて一言「クツが入っていました」と書くことでガッカリ感も伝えられますし、なにより妄想していたときとのギャップを与えることができます。このギャップこそがテンションのコントロールです。
先に「テンションが高けりゃなんでも面白くなる」と書きましたが、それはテンションを上げて書くと、地で書いたときにものすごくテンションが低く感じられる、つまり抑揚がつけやすい、テンションのコントロールがしやすいという意味です。
最後の「は?お前、あのさあ、えっ?なに?札束は?俺の札束は?俺のバリは?俺の乳首は?乳首は俺のじゃねえよ」のところで下がったテンションを怒りという形でまた上げています。しかし今度は一度落ちたテンションを無理やり上げているので、混乱しています。
この混乱している部分、最後「乳首は俺のじゃねえよ」の自分ツッコミも、テンションを上げて、文章を混乱させているために有効になっています。普通のテンションでこれをやるとだいたいスベります。
このほかにも漫画などのセリフを流用する「パロディ」、テキストサイトでは鉄板の「下ネタ」「自虐」などありますが、まあ、これは解説の必要はないでしょう。
ただ、最後の「自虐」に関しては、「悲しいこと、個人的に嫌なことを書く」ことではなく「最後に自分を悪者にしてオチを書く」、そういう書き方のほうが有効です。このサイトで書いた債務整理の件でそれは感じました。
後者のいいところは、どんなに口汚く罵ってもそれが自分自身のことだから誰も傷つかない、つまり敵を作らないところです。敵を作ったほうが面白いことももちろんありますが、あれはまた違ったテクニックが必要です。
いかがでしたか?みなさんのテキストサイトライフに少しは役に立てれば幸いです。